米子簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を懲役参月に処する。
押収に係る磁石壱個(証一)は之を没収する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
(罪となるべき事実)
被告人は昭和二十八年六月二十二日米子市東倉吉町九十番地小安ホールこと安田定義方において同人所有に係るパチンコ機械を使用して、パチンコ遊戯をなし、打玉が当り穴に入らずして、「アウト」穴に入らんとする瞬間に所携の磁石を(証第一号)を使用し、その外れ玉をそのまま落下せしめず当り穴に誘導し、これにより勝玉を落下させてパチンコ玉をとる方法により、右遊戯場管理者安田定義所有に係る、パチンコ玉約百五拾個位を窃取したものである。
(証拠の標目)(省略)
(前科の点)(省略)
(法令の適用)
窃盗の点 刑法第二百三十五条
累犯加重の点 刑法第五十六条 第五十七条
没収の点 刑法第十九条第一項第二号第二項
訴訟費用負担の点 刑事訴訟法第百八十一条第一項
(被告人並びに弁護人の主張に対する判断)
なお被告人並びに弁護人は本件パチンコはどこまでも遊戯場でありパチンコ玉を持ち帰つてどうするというものでもなく、また不法領得意思なく、自己の所有に移しても居らずただ借りているだけであるからあくまで窃盗罪を構成しない。之を要するに、成法上は業務妨害以外に擬律の法条は見出せないと主張するにあり。
然し被告人は、当り穴に打玉を入れさえすれば勝玉が出て、その勝玉を取得することができるとの事実に着眼し、これを利用し、所携の磁石を不正に使用して、「アウト」玉を「セーフ」穴に誘導し勝玉を流出せしめ、よつて財物であるパチンコ玉に対し、他人の所持を侵しこれを自己の現実支配に移し、もつて不正に領得したものであつて、右行為は、本件パチンコ機械の正常なる遊戯方法によらず、即ち不法なる領得の手段方法を選びたるに過ぎざるものであつて、窃盗罪を構成すること、叙上認定の通り明白であるから、弁護人等の右主張は採用しない。
仍て主文の通り判決する。(昭和二九年二月二五日米子簡易裁判所)